令和2事業年度事業報告書
1.機構の業務内容、事務所の所在地
(1)業務内容
a) 農水産業協同組合貯金保険法(昭和48年法律第53号)に基づく業務
① 保険料の収納
② 貯金者等に対する保険金等の支払
③ 経営困難農水産業協同組合に係る合併等(付保貯金移転を含む。)に対する資金援助(金銭の贈与、資金の貸付け又は預入れ、資産の買取り、債務の保証又は引受け、優先出資の引受け等及び損害担保)
④ 追加的資金援助
⑤ 貯金等債権の買取り
⑥ 協定債権回収会社に対する業務(協定の締結、回収業務の円滑な実施に必要な資金の出資、損失の補てん若しくは資金の貸付け又は債務の保証、金銭の収納、回収業務の実施に必要な指導及び助言等)
⑦ 管理人の業務
⑧ 金融危機対応業務
⑨ 決済債務の弁済のための資金、貯払い資金及び資産価値の減少防止のための資金の貸付け等
b) 農水産業協同組合の再生手続の特例等に関する法律(平成12年法律第95号)に基づく業務
第2章及び第3章の規定に基づく貯金者代理の業務
c) 株式会社東日本大震災事業者再生支援機構法(平成23年法律第113号)に基づく業務
機構の設立及び機構に対する出資
d) a)~c)の業務に附帯する業務
(2)事務所の所在地
所在地 | 電話 | FAX |
〒100-0005 東京都千代田区丸の内3-3-1(新東京ビル) | 03-3285-1270 | 03-3285-1274 |
2.機構の沿革等
(1)機構の沿革
年月 | 事項 |
---|---|
昭和48年 9月 | ・設立 |
昭和61年 9月 | ・農水産業協同組合貯金保険法(以下、この表において「貯金保険法」という。)改正により ①保険金の仮払金支払制度の導入 |
平成 8年 6月 | ・貯金保険法改正により ①対象組合に特定漁連(注)の追加 |
平成 9年12月 | ・貯金保険法の改正により ①資金援助対象に新設合併の追加 |
平成10年 5月 | ・貯金保険法の改正により ①資金の借入れに対する政府保証の付与の導入 |
平成12年 5月 (平成13年4月1日施行) | ・貯金保険法等の改正により ①対象組合に農林中金、信農連、信漁連等の追加 |
平成14年 1月 | ・貯金保険法の改正により 資金援助対象に指定支援法人(注)の追加 (注)指定支援法人とは、農林中央金庫及び特定農水産業協同組合等による信用事業の再編及び強化に関する法律(平成8年法律第118号)第32条に規定する法人をいう。 |
平成14年12月 (平成15年4月1日施行) | ・貯金保険法の改正により ①決済用貯金の全額保護措置の導入 |
平成23年 8月 (平成23年9月26日施行) | ・農林中央金庫及び特定農水産業協同組合等による信用事業の再編及び強化に関する法律の改正により ①震災特例組合に係る特定優先出資等の取得に関する業務の導入 |
平成23年11月 (平成24年1月26日施行) | ・株式会社東日本大震災事業者再生支援機構法の成立により 同機構の設立の発起人となり、1,314百万円を出資 (平成24年2月17日) |
平成27年9月 (平成28年4月1日施行) | ・農業協同組合法等の改正により 対象組合に特定承継会社を追加(令和8年3月末まで) |
平成30年2月 (平成30年2月7日施行) | ・株式会社東日本大震災事業者再生支援法の改正により 同機構に663.8百万円を追加出資(平成30年6月26日) |
平成30年9月 | ・上記、震災特例業務終了 |
(2)設立根拠法
農水産業協同組合貯金保険法
(3)主務大臣
農林水産大臣、財務大臣、金融庁長官
(4)審議等機関
運営委員会(委員7人以内並びに機構の理事長及び理事で組織)
(令和3年3月31日現在)
氏名 | 現職 | |
---|---|---|
委員長(理事長) | 増田 直弘 | |
委員<五十音順> | 石黒 秀一 | 愛知県信用農業協同組合連合会経営管理委員会会長 JAバンク代表者全国会議副議長 |
同 | 大槻 奈那 | 名古屋商科大学大学院教授、 マネックス証券株式会社執行役員チーフ・アナリスト |
同 | 大野 早苗 | 武蔵大学経済学部教授 |
同 | 加々美 博久 | 弁護士 |
同 | 後藤 彰三 | 農林中央金庫代表理事専務 |
同 | 中平 和典 | 全国漁業協同組合連合会専務理事 |
同 | 山田 秀顕 | 全国農業協同組合中央会常務理事 |
理事 | 橋本 裕治 |
3.資本金の状況
(単位:百万円)
令和元事業年度末 | 令和2事業年度増減 | 令和2事業年度末 | 備考 | ||
---|---|---|---|---|---|
政府出資金 | 2,055 | 0 | 2,055 | 一般勘定 75 東日本大震災事業者再生支援勘定 1,980 | |
日本銀行出資金 | 75 | 0 | 75 | ||
150 | 0 | 150 | |||
農林中央金庫 | 75 | 0 | 75 | ||
信用農業協同組合連合会等 | 67.5 | 0 | 67.5 | 96団体 | |
信用漁業協同組合連合会等 | 7.5 | 0 | 7.5 | 37団体 | |
合 計 | 2,280 | 0 | 2,280 |
令和3年4月1日付けの信用漁業協同組合連合会の合併により、信用漁業協同組合連合会等の団体数は22団体となっている。
4.役員の状況
定員 : 理事長1人、理事1人、監事1人
氏名 | 役職 | 任期 | 経歴 |
---|---|---|---|
増田 直弘 | 理事長 | 令和元年10月1日~令和4年9月30日 | (前)農水産業協同組合貯金保険機構理事 |
橋本 裕治 | 理事 | 令和元年10月1日~令和3年9月30日 | (前)農林水産省東海農政局次長 |
金井 千尋 | 監事(非常勤) | 令和2年5月1日~令和4年4月30日 | 公認会計士 |
5.職員の状況
職員の定数
令和元事業年度末 | 令和2事業年度増減 | 令和2事業年度末 |
---|---|---|
18人 | 0人 | 18人 |
6.当該年度及び過年度分を含めた業務の実施状況
(1)農水産業協同組合貯金保険法に基づく業務
① 保険料収納の状況
(単位:百万円)
平成30事業年度 | 令和元事業年度 | 令和2事業年度 | |
---|---|---|---|
保険料 | 15,152 | 8,908 | 8,963 |
② 資金援助発動の状況
(単位:百万円)
平成14事業年度まで | ||
---|---|---|
資金援助 | 111,870 | |
金銭贈与 | 93,958 | |
資金貸付 | 2,767 | |
資産買取 | 8,858 | |
債務の保証 | 6,287 | |
件 数 | 22件 |
平成15事業年度以降、新たな組合の破綻は生じていない。
なお、資金援助額は、運営委員会決定ベースである。
また、上記のほか、貯払資金貸付58百万円のうち23百万円が資金援助とみなされている。
③ 立入検査及び調査業務等
貯金者データの整備状況に係る立入検査を31組合に対して実施した。
また、貯金保険制度により保護される貯金の割合を把握するため、保険対象組合に対し、貯金カバー率調査を実施した。
(2)株式会社東日本大震災事業者再生支援機構法に基づく業務
出資の状況
(単位:百万円)
平成23事業年度 | 平成30事業年度 | |
---|---|---|
出資額 (累計) | 1,314 | 664 (1,978) |
平成23事業年度及び平成30事業年度以外の出資はない。
7.資金計画の実施の結果 (PDF形式)
8.借入金残高の状況
令和3年3月末現在、借入金残高はない。
9.機構が行った出資の状況
株式会社東日本大震災事業者再生支援機構法に基づく出資
株式会社東日本大震災事業者再生支援機構法第54条第1項の規定に基づき、同機構の設立の発起人となり出資を行っている。
出 資 先 | 取 得 日 | 出資金額 (百万円) | 取得株式数 |
---|---|---|---|
株式会社東日本大震災 事業者再生支援機構 | 平成24年2月22日 | 1,314 | 26,280 |
平成30年6月28日 | 664 | 13,276 | |
合 計 | 1,978 | 39,556 |
株式会社東日本大震災事業者再生支援機構の概要
(令和3年3月31日現在)
所在地 | 本店 宮城県仙台市青葉区一番町4丁目6-1 仙台第一生命タワービルディング19階 東京本部 東京都千代田区丸の内2丁目2-2 丸の内三井ビルディング10階 | ||
資本金 | 29,984百万円 | ||
事業内容 | ① 再生支援の対象となった事業者(以下「対象事業者」という。)に対して金融機関等が有する債権の買取り等 ② 対象事業者に対する次に掲げる業務 イ 資金の貸付け(社債の引受けを含む。) ③ 債権買取り等に係る債権の管理及び譲渡その他の処分 | ||
役員の状況 | 取締役5名、監査役2名 | ||
役員の代表者名 | 松﨑 孝夫 | ||
職員数 | 88名 | ||
機構の持株比率 | 6.6% | ||
沿革 | 平成24年2月22日 設立 |
10.機構が対処すべき課題
農水産業協同組合貯金保険機構(以下「機構」という。)は、「農水産業協同組合(以下「組合」という。)が貯金等の払戻しを停止した場合に必要な保険金等の支払と貯金等債権の買取りを行うほか、経営困難農水産業協同組合に対し、合併等に対する適切な資金援助、管理人による管理及び金融危機に対応するための措置等の制度を確立し、もって信用秩序の維持に資する。」ことを使命としている。
平成15年以降、組合に対する資金援助事案は発生していないが、一方で、マイナス金利環境の継続に伴う厳しい経営環境が続いている中、新型コロナウィルス感染症の拡大が内外経済に甚大な影響をもたらす状況となっている。
また、東日本大震災の発生により、株式会社東日本大震災事業者再生支援機構法(以下「事業者再生支援機構法」という。)に係る業務への適切な対応が引き続き求められている。
機構としては、このような情勢を踏まえ、中期業務目標(令和元年度~令和3年度)及び各年度の業務運営方針に掲げた課題を着実に執行し、貯金者保護と信用秩序維持のためのセーフティネットとしての機能を果たすべく取り組んだ。
特に、令和2年度においては、
① 機構職員による破綻処理実務及びシステム運営等の安定的な運用が可能となる態勢を構築するため、職員研修及びプロジェクトチームによる内部検討を実施した。
また、破綻処理システム等の機能向上を図るための最適化等を実施した。
② 破綻処理システム等のオペレーション能力向上のため、組合のデータを活用したシミュレーションテスト等を実施した。
③ 円滑な貯金等の払戻しのための名寄せに係るデータ整備の向上に向け、都道府県等と連携した組合への立入検査を着実に実施するとともに、「貯金者データ自己点検システム」等を改善・活用し、系統組織と連携した組合の貯金者データ整備を推進した。
④ 農漁協系統職員に対する研修会、都道府県行政担当者に対する制度説明会を実施し、組合破綻時における事務処理能力向上等に取り組んだ。
⑤ 責任準備金の積立目標額5,000億円(令和元年度から10年程度で積立)の確実な達成に向けた取り組み及び令和元年度から適用されている保険料率の妥当性に関する検証に適切に対応した。
⑥ 事業者再生支援機構法に係る業務について、事業者再生支援機構及び関係当局等の間で適切に対応した。
令和3年度は、新型コロナウィルス感染症の動向も踏まえつつ、中期業務目標(令和元年度~令和3年度)及び令和3年度業務運営方針に掲げた課題に積極的に取り組むこととする。
また、毎年度の保険料収入については、資金援助等に充当した残余の額を有事の際の支出に備える責任準備金として積み立てており、引き続き、その安全かつ効率的な運用・管理と、簡素な組織の維持により事務的経費の縮減に努めていくこととする。