2.農水産業協同組合に求められるデータ整備等
(1)データ整備とシステム対応の必要性
貯金保険制度の下では、農水産業協同組合が貯金等の払戻しができなくなった場合などに、貯金者の保護及び破綻農水産業協同組合に係る資金決済の確保を図り、信用秩序の維持に資するために、貯金等が保護されています。このため、貯金保険機構は、付保貯金を特定し、貯金者ごとの付保貯金額の算定などを迅速に行う必要があります。同一の貯金者が当該農水産業協同組合に複数の貯金口座を有する場合には、これらをまとめたうえで、定められた優先順位に照らして、どこまでが付保貯金となるかを特定し、貯金者ごとの付保貯金額を算定する作業が必要となります(以下「名寄せ」といいます)。これを確実なものとするよう、貯金保険法では農水産業協同組合に貯金者データの整備及びシステムの対応を義務付けています。
(2)農水産業協同組合における対応
農水産業協同組合は、平時から名寄せ等に必要な貯金者データを整備し、破綻の際には貯金者データを遅滞なく貯金保険機構に提出することが義務付けられています。この場合に、農水産業協同組合が貯金保険機構に提出するデータの具体的な様式を定めたものが「機構指定フォーマット」です。その内容は、貯金者の氏名、生年月日、住所(法人の場合は名称、設立年月日、所在地)、電話番号、口座番号、貯金等の元本及び利息額等の項目で構成されています。
農水産業協同組合の破綻時に、こうしたデータが貯金保険機構に遅滞なく提出されないと名寄せ等ができず、迅速な貯金者保護が困難になります(このため、農水産業協同組合の破綻時における貯金者データの提出に係る手順等の整備も必要となります)。
このほか、農水産業協同組合には破綻時に支払対象貯金等に係る保険金の支払またはその払い戻しその他の保険事故に対処するために必要な措置を講ずることが義務付けられています。
(3)貯金保険機構における対応
貯金保険機構は、農水産業協同組合が破綻したとき、当該農水産業協同組合から速やかに磁気テープ等により貯金者データの提出を受け、貯金保険機構が保有しているシステムにより名寄せ等を行います。
また、貯金保険機構は、都道府県知事(または農林水産大臣及び金融庁長官)が必要と認めたときは、都道府県知事(または農林水産大臣及び金融庁長官)の命を受け、農水産業協同組合のデータベース及びシステムの整備について対応状況を確認するため、立入検査を行っています(注)。
(注) 貯金保険機構は、上記の他に農水産業協同組合の保険料の納付の適正性及び農水産業協同組合が破綻したとき貯金等債権について弁済を受けることができると見込まれる額についても立入検査を行うことができます。