平成16事業年度貯金保険機構年報
Ⅱ.貯金保険制度及び貯金保険機構の概要
1.対象組合
本制度の対象となる組合は、次の組合であり、これらの対象組合が対象貯金等を受け入れた時点で、機構、組合と貯金者の間で自動的に保険関係が成立することとなる。
○ 農業協同組合(信用事業を行う組合に限る。)
○ 信用農業協同組合連合会
○ 漁業協同組合(信用事業を行う組合に限る。)
○ 信用漁業協同組合連合会
○ 水産加工業協同組合(信用事業を行う組合に限る。)
○ 水産加工業協同組合連合会(信用事業を行う連合会に限る。)
○ 農林中央金庫
(注) 銀行法に規定する銀行、長期信用銀行法に規定する長期信用銀行、信用金庫、信用協同組合、労働金庫、信金中央金庫、全国信用協同組合連合会、労働金庫連合会は、「預金保険制度」に加入。日本郵政公社の郵便貯金は政府により保証。証券会社は「投資者保護基金」、生命・損害保険会社は「保険契約者保護機構」に加入。
2.対象貯金等
貯金保険の対象となる貯金等の範囲は、次のとおりである。
イ.貯金、ロ.定期積金、ハ.元本補てん契約のある金銭信託(貸付信託を含む。)ニ.農林債券(保護預り専用商品に限る。)及びこれらの貯金等を用いた積立・財形貯蓄商品、ホ.確定拠出年金の積立金の運用に係る貯金等
ただし、次の貯金等は対象から除外される。
イ. 外貨貯金、ロ.譲渡性貯金、ハ.特別国際金融取引勘定において経理された貯金(オフショア貯金)、二.日本銀行(国庫金を除く。)、ホ.対象農水産業協同組合その他の金融機関からの貯金(確定拠出年金の積立金の運用に係る貯金等を除く。)、へ.貯金保険機構からの貯金、ト.無記名貯金、チ.他人・架空名義貯金、リ.導入貯金、ヌ.元本補てん契約のない金銭信託、ル.農林債券(保護預り専用商品以外)
3.貯金等の保護の範囲
組合が破綻したとき、付保貯金の額は、平成17年4月以降は、保険の対象となる貯金等のうち、決済用貯金(無利息、要求払い、決済サービスを提供できること、という3要件を満たす貯金)に該当するものは全額保護(恒久措置)となり、それ以外の貯金等については1組合ごとに貯金者1人当たり元本1,000万円までとその利息等が保護される。(注)
保険の対象となる貯金等のうち決済用貯金以外の貯金等で元本1,000万円を超える部分及び保険対象外の貯金等並びにこれらの利息等については、破綻組合の財産の状況に応じて支払われるため、一部カットされることがある。
(注) 平成14年度においては、当座貯金、普通貯金、別段貯金については、特定貯金として全額保護となっていた。その後、平成14年の貯金保険法の改正により、平成15年度と16年度の2年間は、当座貯金、普通貯金、別段貯金は決済用貯金とみなされ、全額保護となっていた。
貯金等の分類 | 保護の範囲 | ||
貯金保険の対象貯金等 | 当座貯金 普通貯金 別段貯金 |
決済用貯金(注1) (利息のつかない等の3要件を満たす貯金) |
全額保護(恒久措置) |
定期貯金・貯蓄貯金・通知貯金・定期債金・農林債券(リツノーワイド等の保護預かり専用商品)等(注2) | 一般貯金等(決済用貯金以外の貯金) | 元本の合計1,000万円までとその利息等(注3)を保護 1,000万円を超える部分は、破綻組合の財産の状況に応じて支払われる(一部カットされることがある。) |
|
貯金保険の対象外貯金等 | 外貨貯金、譲渡性貯金、農林債券(ワリノー、リツノーの保護預かり専用商品以外の商品)等 | 保護対象外:破綻組合の財産の状況に応じて支払われる(一部カットされることがある) |
(注1) 「無利息、要求払い、決済サービスを提供できること」という3要件を満たすもの。
(注2) このほか、納税準備貯金、貯金保険の対象貯金を用いた積立・財形貯蓄商品が該当する。
(注3) 定期積金の給付補てん金も利息と同様保護される。
4.決済債務の保護
組合が行う資金決済に係る取引(為替取引、手形交換所において決済をすることができる手形、小切手等の提示に基づき行われる取引、組合が自己宛に振り出した小切手に係る取引)に関し組合が負担する債務を決済債務(注)という。例えば、組合が破綻前に顧客から振込みの依頼は受けているものの、顧客から受け入れた資金が振込先へ移動していない取引に係る債務がこれに該当する。
決済債務は、全額保護される。
注) 組合自身や金融業を営む者※の委託に起因する取引による債務は、原則として決済債務に該当しない。ただし、組合が業として行う取引に関する債務でない場合等は、決済債務に該当する。
なお、決済債務のうち決済用貯金として経理されていないものを「特定決済債務」という。例えば、決済債務のうち、組合貯金や仮受金等として経理されているものが、これに該当する。
農水産業協同組合、銀行法に規定する銀行、
長期信用銀行法に規定する長期信用銀行、信用金庫、信用協同組合、
労働金庫、信金中央金庫、全国信用協同組合連合会、
労働金庫連合会、商工組合中央金庫
5.保険料
保険料は、平成8年度から平成13年度までは、一般保険料と特別保険料(貯金等全額保護等のため)の2種類あったが、平成13年度限りで特別保険料(注1)は廃止された。
一般の保険料は、保険金支払(ペイオフ)や貯金者に保険金を支払った場合に機構が負担すると見込まれる費用(以下「ペイオフコスト」という。)内での資金援助等の業務の原資となる。
(注1) 特別保険料は、貯金等の全額保護の特例措置(平成8年度から平成13年度の間)に対応するため、ペイオフコストを超える資金援助(特別資金援助)の実施等を行うことを目的に特別に設けられた勘定の原資。貯金保険対象組合は、特別保険料(料率は政令によって対象貯金残高に対し0.012%と定められていた)を納付することが義務づけられていたもの。
保険料率は、運営委員会の議決を経たうえで、農林水産大臣、財務大臣、金融庁長官(内閣総理大臣による法定委任。以下同じ。)の認可を受けて決定し、公告する手続をとることになっている。
なお、保険料は、前年度の貯金保険対象貯金等の残高(平成14年度から、それまでの前年度末日の残高から前年度各営業日の残高の平均に移行)に保険料率を乗じて算出することとなっており、貯金保険対象組合は、毎年6月30日までに機構に納付することが義務づけられている。
平成14年度の保険料率については、「特定貯金」が引き続き全額保護される一方、「その他貯金等」が定額保護(元本1,000万円までとその利息等が保護対象)に移行するなかで、農水産業協同組合貯金保険法(以下「貯金保険法」という。)や平成11年12月の金融審議会の答申の趣旨を勘案し、「特定貯金」は0.034%に、「その他貯金等」は0.017%と定められた。(注2)
(注2) この場合、保険料の合計額は、特定貯金の残高に0.034%を乗じたものとその他貯金等の残高に0.017%を乗じたものの合計額となる。
このため、組合が負担する全体としての実行料率は、0.030%(それぞれの貯金残高による加重平均)となる。
平成15年度の保険料率は、平成14年12月に改正された貯金保険法の規定により、新たに定められることとなった。ただし、平成15年度と平成16年度の2年間は、14年度まで全額保護となっていた「特定貯金」が「決済用貯金」とみなされて引続き全額保護され、これまでの「その他貯金等」が「一般貯金等」となり定額保護されるなど、貯金保護の枠組みは実質的に平成14年度と同様となった。
このため、「決済用貯金」と「一般貯金等」の料率格差の設定については、連続性にも配慮しつつ、貯金保険法の趣旨等を勘案し、「決済用貯金」は0.034%、「一般貯金等」は0.017%と定められた。
平成16年度の保険料率については、これまでの組合の破綻の状況及び機構の財政状況等を勘案し、「決済用貯金」は0.017%に、「一般貯金等」は0.014%と定められた。
貯金保険料率の推移
一般保険料① | 特別保険料*② | 計(①+②) | ||
昭和48年(制度発足時)~ | 0.006% | な し | ||
昭和61年 | 0.010% | な し | ||
昭和62年 | 0.011% | な し | ||
昭和63年~ | 0.012% | な し | ||
平成8年~ | 0.018% | 0.012% | 0.030% | |
平成13年 | 特定貯金 | その他貯金等 | 0.012% | 0.030% |
0.018% | 0.018% | |||
平成14年 | 0.034% | 0.017% | な し | |
平成15年 | 決済用貯金 | 一般貯金等 | な し | |
0.034% | 0.017% | |||
平成16年~ | 0.017% | 0.014% | な し |
*平成8年度~13年度の間に限定(貯金保険法附則第10条第1項)
6.組合の破綻処理
(1)資金援助
①概要
資金援助とは、組合が破綻した場合、機構が、信用事業譲渡・合併等を行う救済組合に対し、金銭の贈与等を行うものである。資金援助によって、合併等は円滑に行われ、破綻組合の付保貯金が救済組合に引継がれ保護されることとなる。資金援助の方法としては、金銭の贈与、資金の貸付け又は預入れ、資産の買取り、債務の保証、債務の引受け、優先出資等の引受け等、損害担保(いわゆるロスシェアリング)がある。
なお、これらの処理は、実務的には破綻組合の管理が管理人により行われていることを前提としている。
信用事業譲渡に係る資金援助は、貯金等の全額保護下においては、信用事業の全部譲渡の場合に限られていたが、平成14年度以降の貯金等の定額保護下においては、原則としてペイオフコストの範囲内で行われ、救済組合等に付保貯金と健全資産等を内容とする信用事業の一部を譲渡する場合が中心となる。
信用事業の一部譲渡の場合、信用事業譲渡されなかった債権者に対する清算配当額を確保する目的で、機構が破綻組合に対し債権者間の衡平を図るための資金援助(金銭の贈与に限る。)を行うことが出来るように手当てされている。
②資金援助の対象
イ 救済組合
合併等(吸収又は新設合併、信用事業の全部又は一部譲渡、付保貯金移転をいう。以下同じ。)により、経営困難組合を救済処理しようとする組合(以下「救済組合」という。)に対して、機構は、直接的に資金援助を行うことができる。
ロ 経営困難組合
信用事業の一部譲渡又は付保貯金移転を行う場合に限り、機構は経営困難組合に対して、債権者間の衡平を図るための資金援助を行うことができる。
ハ 連合会・農林中金
経営困難組合の合併等について組合に係る相互援助取決めにより援助を行う連合会等(農水産業協同組合連合会及び農林中金をいう。以下同じ。)に対して、機構は資金援助を行うことができる。
ニ 指定支援法人
農林中金の指導に基づき行われる合併等(付保貯金移転を除く。)について支援業務を行う指定支援法人(農林中央金庫及び特定農水産業協同組合等による信用事業の再編及び強化に関する法律(平成8年法律第118号)第32条第2項に規定する指定支援法人をいう。)に対して、機構は資金援助を行うことができる。
③資金援助の手順
都道府県知事(又は農林水産大臣及び金融庁長官)による合併等に関する適格性の認定あるいは合併等のあっせんを受けた救済組合は、機構に対し資金援助の申込みを行うことができる。申込みを受けた機構は、運営委員会の議決(その際、運営委員会は機構の財務状況、資金援助見込額、ペイオフコストを考慮し、機構資産の効率的利用に配慮することとされている。)を経て、資金援助の可否及び資金援助の額その他資金援助を行うにあたり必要と認められる事項を決定し農林水産大臣、財務大臣及び金融庁長官の認可を受ける。機構は、この決定をしたときは、救済組合と資金援助に関する契約を締結し、資金援助を実施することとなる。
(注) 適格性の認定は、次の4条件をすべて満たす場合に限り、行うことが出来ることとされている。
○ 当該合併等が行われることが貯金者等その他の債権者の保護に資すること。
○ 機構による資金援助が行われることが当該合併等を行うために不可欠であること。
○ 当該合併等に係る破綻組合について合併等が行われることなく、その信用事業に係る業務の全部の廃止又は解散が行われる場合には、当該破綻組合が信用事業を行っている地域又は分野における資金の円滑な需給及び利用者の利便に大きな支障が生ずるおそれがあること。
○ 機構による資金援助が、救済組合の信用事業に係る業務の健全かつ適切な運営のために活用されることが確実であると認められること。
(2)保険金の支払い
機構による保険金支払の原因となる保険事故には、次の2種類があり、保険金の支払は保険事故が発生した組合の貯金口座の名寄せ(貯金者ごとの付保貯金額の算定等)等の準備が整い次第、貯金者からの請求に基づいて行われる。
第一種保険事故 組合の貯金等の払戻しの停止
この場合、機構は、保険事故発生の日から1か月以内(必要に応じて1か月以内で延長が可能)に、保険金の支払いを行うかどうかについて、運営委員会の議決を経て決定する。
第二種保険事故 組合の解散の議決に係る認可、破産手続開始の決定、解散命令、又は法定解散(注)
この場合、機構の決定を要することなく、当然に保険金の支払いが行われる。
(注) 法定解散とは、組合が組織を維持するために必要な組合の法定会員数又は組合員数を欠けたことが要因で解散すること。
貯金者に支払われる保険金の額は、保険事故発生日に当該組合に預入している保険対象となる貯金等の元本とその利息等の合計額で、元本の額は、決済用貯金は全額、一般貯金等は1貯金者当たり1,000万円までと定められている(ただし、担保貯金等については、当該担保権に係る被担保債権が消滅するまで支払を保留できる)。
機構は、第一種保険事故が発生した場合、保険金の支払い及び公告事項(保険金の支払期間、支払場所、支払方法、支払取扱時間等)を運営委員会の議決を経て決定し、保険金の支払いに関する公告事項を官報に掲載並びに破綻組合等の店頭への掲示等の方法により公告し、貯金者に周知徹底を図ることになっている。
また、第二種保険事故の場合には、運営委員会の議決を経ることなく保険金を支払うこととなるので、機構は周知するべき事項を定め、公告することになる。
なお、機構の保険金の支払方法には、貯金者に直接現金等により支払う方法のほか、円滑かつ迅速な支払事務処理や現金取扱いのリスク回避の観点から、他の健全な金融機関に、機構が保険金支払相当額の普通預貯金を設定し、これを貯金者に譲渡する方法もある。
(3)仮払金の支払
仮払金は、保険事故が発生し、保険金の支払開始又は付保貯金の払戻しまでにかなりの日数を要すると見込まれるような場合、破綻組合の貯金者等の当座の生活資金等に充てるため支払われるものである。機構が仮払金の支払を行うためには、保険事故発生の日から1週間以内に、運営委員会の議決を経て仮払金を支払う旨の決定することが必要とされている。
仮払金は、各貯金者の普通貯金残高(元本のみ)について、1口座につき60万円を限度として支払われるが、後に保険金等が支払われる時には、この仮払金支払額はその貯金者等の保険金の額等から控除されることになる。
なお、仮払金を支払う場合には、公告等について保険金の支払と同様の手続きをとることとなっている。
(4)保険金及び仮払金支払の実績
制度発足以来、保険金及び仮払金の支払の実績はない。
(5)保険金及び仮払金の支払業務の委託
機構は、保険金及び仮払金の支払を決定したときは、組合その他の金融機関に対して、保険金及び仮払金の支払その他これに附随する業務を委託することができる。
(6)貯金等債権の買取り
貯金等債権の買取りとは、保険事故の発生した組合の付保貯金以外の貯金等(保険対象貯金等のうち決済用貯金以外の貯金等で元本1,000万円を超える部分及び外貨貯金並びにこれらの利息等)を、貯金者等からの請求に基づいて、機構が概算払額(保険事故発生日における貯金等の額に保険事故が発生した組合の破産配当見込額等を考慮して決定した一定の率(概算払率)を乗じた金額)に相当する金額で買い取る制度である。この制度によって、貯金者は弁済金・配当金の受取りを待たずに、事実上前倒しでその一部の回収が可能となる。
この概算払は、資金援助方式及び保険金支払方式のいずれの破綻処理方式においても実施できる。
なお、機構では、買い取った貯金等債権の回収額が、買取りに要した費用を控除しても、概算払額を超えるときは、その超える部分の金額を貯金者に追加的に支払うこととなっている(精算払)。
機構が貯金等債権の買取りを行う場合には、概算払率について運営委員会の議決を経て、農林水産大臣、財務大臣及び金融庁長官の認可を受けた後、買取期間、買取場所、支払方法等を定め、公告することになっている。
○農水産業協同組合が破綻した場合の貯金等の取扱いの概念図
(太線内が貯金保険によって保護される)
(注1)「無利息、要求払い、決済サービスを提供できる」という3要件を満たすもの。
(注2) 定期積金の給付補てん金も利息と同様保護される。
(7)協定債権回収会社
機構は、債権回収会社との間で協定を締結し、その協定を実施するため各種業務を行うことができるとされている。
具体的には、協定債権回収会社に対し、
① 協定の定めによる回収業務の円滑な実施に必要な資金の出資を行うこと
② 協定の定めによる業務の実施により協定債権回収会社に生じた損失の補填を行うこと
③ 協定の定めによる資産の買取りのために必要とする資金その他回収業務の円滑な実施のために必要とする資金について、協定債権回収会社からの申込みに基づき、資金の貸付け又は資金の借入れに係る債務の保証を行うこと
④ 協定の定めによる業務の実施により協定債権回収会社に生じた利益の納付を受けること
⑤ 回収業務の実施に必要な指導及び助言を行うこと
等ができる。
(8)管理人による管理
都道府県知事又は主務大臣(この場合は、農林水産大臣及び金融庁長官をいう。)は、組合が債務超過又は貯金の払戻しの停止のおそれ等があると認めて、管理を命ずる処分を行うときは、一人又は数人の管理人を選任することとされており、機構は法人として管理人になることができる。機構が管理人に選任された場合には、他に選任された管理人と連携して、その業務に当たることとなる。
管理人の主な業務は、
① 被管理組合の業務の執行及び財産の管理処分
② 被管理組合の役員等の経営責任の追及
③ 救済組合への事業承継(合併又は事業譲渡)
等である。
(9)金融危機への対応のための業務
主務大臣(この場合は、農林水産大臣及び内閣総理大臣をいう。)は、次の①、②の措置を講じなければ、我が国又は当該組合が業務を行っている地域の信用秩序維持に極めて重大な支障が生ずるおそれがあると認めるときは、金融危機対応会議(内閣総理大臣が議長)の議決を経て、当該措置を講ずることができる。
① 組合(②の組合を除く。)の自己資本充実のために行う、機構による優先出資の引受け等
② 破綻又は債務超過の組合に対し、保険金の支払に必要な費用の額を超える額の機構が行う資金援助
(この場合は、機構は、主務大臣の命を受けて上記措置に関する業務を行うこととなるが、②の措置を受ける組合には、管理を命ずる処分が行われる。)
※ 必要な財源:組合の負担金(負担金で不足するときは政府の補助)
借入限度額:1,000億円(国会の議決による政府の債務保証あり)
(10)その他の貸付け業務
① 貯金の払戻しのための資金の貸付け
管理人による管理を命ずる処分を受けた組合又は民事再生法に基づく管財人若しくは保全管理人による管理を命ずる処分を受けた破綻組合に対し、機構は運営委員会の議決後、主務大臣の認可を受けて、貯金の払戻しのために必要な資金の貸付けを行うことができる。
② 決済債務の弁済のための資金の貸付け
管理人による管理を命ずる処分を受けた組合又は民事再生法に基づく管財人若しくは保全管理人による管理を命ずる処分を受けた破綻組合に対し、機構は運営委員会の議決後、主務大臣の認可を受けて、決済債務の弁済のために必要な資金の貸付けを行うことができる。
③ 資産価値の減少防止のための資金の貸付け
管理人による管理を命ずる処分を受けた組合(再生手続開始の申立後のものに限る。)又は民事再生法に基づく管財人若しくは保全管理人による管理を命ずる処分を受けた破綻組合に対し、機構は、運営委員会の議決後、主務大臣の認可を受けて、資産価値の減少防止のために必要な資金の貸付けを行うことができる。
(11)立入検査業務
貯金保険法では、同法の円滑な実施を確保する観点から、主務大臣(農林水産大臣、金融庁長官)又は都道府県知事が必要があると認める場合には、機構に組合に対する立入検査を行わせることができると規定されている。
機構が行うことができる立入検査は、貯金保険法第117条第6項に規定されており、
① 保険料の納付が適正に行われていること(同項第1号)
② 組合に義務付けられている名寄せのためのデータベース及びシステムの整備が講ぜられていること、また支払対象決済用貯金に係る保険金の支払又はその払戻しが円滑に行われるよう機構による名寄せ結果データを速やかに処理するためのシステムの整備が講ぜられていること(同項第2号)
③ 組合が破綻したときの貯金等債権について弁済を受けることができると見込まれる額(同項第3号)
の3項目となっている。
(12)再生特例法に基づく手続
機構は、再生特例法により、破綻した組合の再生・破産手続を円滑に進めるため、貯金者に代わって、再生・破産債権の届出(貯金者表を作成のうえ裁判所に提出)、再生計画案に関する議決権の行使などを行うことになっている。
機構が議決権を行使するときは、同意しようとする再生計画案の内容をあらかじめ貯金者等に通知・公告する。