平成16事業年度貯金保険機構年報
Ⅰ.一般情勢
平成16年度の我が国経済は、バブル崩壊後の遺産ともいうべき企業部門の過剰雇用・過剰設備・過剰債務からほぼ脱却し、民間需要中心に緩やかな回復を続けた。これらを背景に、企業収益は引き続き増益基調にあり、雇用・所得環境の改善によって、徐々にではあるが着実に家計部門の回復へと波及しつつある。
このような状況の下、我が国の金融システムを巡る局面は、企業部門における回復の動き等を反映し、主要行を中心とする不良債権問題が着実に終息に向かっているほか、中小・地域金融機関や系統金融の分野においても、地域密着というその特性を活かしながら、利用者ニーズに応じた多様で良質な金融商品・サービスを提供していく環境が整うなど、「安定」から「活力」へと次第に転換しつつある。
一方、貯金保険制度を取り巻く情勢をみると、既に平成14年4月から、全額保護対象の当座貯金、普通貯金、別段貯金を除いた、いわゆる「一部定額保護」の体制に移行していたが、平成17年4月1日からは当該枠組みがさらに拡大され、保険の対象となる貯金等のうち決済用貯金以外の貯金等で1,000万円を超える部分及び保険対象外の貯金等並びにこれらの利息等については、破綻農水産業協同組合の財産の状況に応じて支払われる(一部カットされることがある。)という、ペイオフ本格実施の段階を迎えることとなった。
こうした情勢変化をも踏まえ、貯金保険制度とともに系統金融システムの安定に資する制度として、「JAバンクシステム」(農協系統信用事業)、「マリンバンク安心システム」(漁協系統信用事業)がそれぞれ構築され、逐次、その整備・充実が図られてきているところであるが、農水産業協同組合貯金保険機構(以下「機構」という。)としても、万一、保険事故が発生した場合における円滑な保険金等の支払いを確保するため、引き続き立入検査等を通じ、貯金等に関するデータベース及び電子情報処理組織の整備促進等を農水産業協同組合に求めていくこととしている。
また機構としては、与えられた任務を適時適切に遂行していくため、公的管理人業務に関するこれまでの経験を総括・蓄積するとともに、民事再生法等の倒産法制を活用した破綻処理スキームに係る事務手続き等の整備を図っていくほか、緊急時において的確に対応しうるための職員向け教育訓練の強化や、貯金保険制度への一層の理解を深めるための広報活動の強化等について、今後とも鋭意取り組んでいくこととしている。