平成15事業年度貯金保険機構年報
Ⅰ.一般情勢
平成15年度の我が国経済は、年度当初には踊り場的な状況がみられたが、米国を初め世界経済が回復する中で、輸出や生産が再び緩やかに増加していくとともに、企業収益の改善が続き、設備投資も増加するなど、企業部門の回復がみられた。
金融情勢については、平成14年3月末をもって貯金等の全額保護の特例措置が終了し、14年4月から定額保護体制に移行しているが、15年度においても、定期性から流動性への預貯金シフトの傾向、一部業態での預金流出の動きなどがなお払拭されたとはいいきれない状況にあった。また、上記の企業部門における回復への動きはあるものの、経済の長期にわたる低迷の影響を受け不良債権処理が進まなかったことなどから、6月には、預金保険法に基づく、りそな銀行に対する資本増強措置が決定され(6月10日)、11月には、同法による足利銀行の特別危機管理開始が決定されるなど、金融システムの安定化は、依然として経済運営における重要課題となった。
このような状況の中、系統金融の世界では、平成15年4月より、農水産業協同組合が有する決済機能の重要性を踏まえ、利息がつかない等一定の要件を満たす決済用貯金のほか、農水産業協同組合が負担する為替決済等の仕掛り中の債務は、決済債務として全額保護されることとなった。(なお、現下の金融情勢に鑑み、平成17年3月末までは、当座・普通・別段貯金は決済用貯金とみなされ、全額保護の経過措置が継続されている。)
また、系統金融システムの安定化に資する制度として、貯金保険制度とは連携すべき関係にある「JAバンクシステム」(農協系統信用事業、平成14年1月発足)、「JFマリンバンクシステム」(漁協系統信用事業、平成15年1月発足)も、逐次、自主ルールの見直し等の整備が進められ、所要の事案については資本増強措置がとられているところである。
このほか、平成13年4月より、保険事故が発生した場合における円滑な保険金等の支払いの確保を図るため、農水産業協同組合には、貯金等に関するデータベース及び電子情報処理組織の整備が義務づけられたところである。
当機構としては、これらの制度改正や環境変化をふまえ、機構の任務を適時的確に遂行していくため、①民事再生法等の倒産法制を活用した破綻処理スキームの整備、②農水産業協同組合の貯金者データの整備促進等のための立入検査の実施と組合自身による総点検運動の推進、③貯金保険制度への一層の理解を深めるための広報活動の強化等を、当面の重点課題として鋭意、取り組んでいるところである。