平成14事業年度貯金保険機構年報
Ⅰ.一般情勢
平成14年度の我が国経済は、景気は輸出や生産の増加を受けて、年度前半には下げ止まった。その後、年度後半は、海外経済や我が国金融システムの不透明感が強まる中、概ね横這いの動きを続けた。
金融情勢については、平成14年3月末をもって貯金等の全額保護の特例措置が終了し、14年4月から定額保護体制に移行しているが、それ以降、定期性から流動性への預貯金シフト、一部業態での預金流出の動きなどがみられた。また、経済の長期低迷による不良債権の増加や株価下落による有価証券評価損の拡大(含み益の減少)など、金融機関にとって厳しい状況が続き、預貯金者の金融機関選別意識も格段に強まってきている。
このような状況をふまえ、同年12月、預金保険法制とともに貯金保険法制も抜本的に改正され、平成15年4月より、農水産業協同組合が有する決済機能の重要性を踏まえ、新たに利息がつかない等一定の要件を満たす決済用貯金のほか、仕掛かり中の決済に係る農水産業協同組合が負担する債務で、保護の対象となる貯金以外のもの(特定決済債務)も全額保護されることとなった。(なお、現下の金融情勢に鑑み、平成17年3月末までは、当座・普通・別段貯金は決済用貯金とみなされ、全額保護の経過措置が継続されている。)
系統金融については、農協系統信用事業において、平成14年1月にスタートした「JAバンクシステム」による自主ルールが強化され、また、漁協系統信用事業においても、15年1月、「JFマリンバンクシステム」が発足し、逐次、整備が進んでいる。
このほか、上記の法制整備により、平成15年4月より、農水産業協同組合には、保険事故が発生した場合における円滑な保険金等の支払いの確保を図るため、電子情報処理組織の整備が義務づけられることとなった。
当機構としては、これら大幅な制度改正や環境変化をふまえ、機構の任務を適時的確に遂行していくため、①民事再生法等倒産法制を活用した破綻処理スキームの整備、②農水産業協同組合の貯金データの整備促進等のための立入検査の実施、③農水産業協同組合が破綻した際の付保貯金の円滑な支払いのための、組合のシステム開発の指導促進等の業務を、当面の重点課題として鋭意、取り組んでいるところである。