平成12事業年度貯金保険機構年報
Ⅱ.業務の概況
当機構は、前記の系統信用事業を巡る情勢を踏まえ、貯金者の保護を図り、信用秩序の維持に資することを目的として、平成12事業年度に次の業務を行った。
1.保険料・特別保険料の徴収 (PDF形式)
平成12年の保険料については、各農協、漁協及び受託金融機関の協力により適時に全額納付された。保険料・特別保険料の対象組合数及び金額は、農協で 1,484組合、保険料 12,148,977千円、特別保険料 8,099,316千円、漁協で 885組合(うち特定漁連26)、保険料 419,371千円(うち特定漁連 168,227千円)、特別保険料 279,579千円(うち特定漁連112,151千円)、計 2,369組合、保険料 12,568,348千円、特別保険料 8,378,895千円であった。
前年と比較すると、組合数では、合併等により、農協が 172組合、漁協が 106組合、合計 278組合の減少となったが、保険料及び特別保険料では、農協で 264,990千円の増加、漁協で7,286千円の減少となり、合計 257,704千円の増加となっている。
2.資金援助の実施 (PDF形式)
(1) 継続案件に係る資金援助
鹿児島県信農連に対する資金援助の実施
平成9年4月1日付けで契約した第3期(平成9事業年度から平成13事業年度までの5年間)の資金援助契約に基づき、平成13年3月29日に平成12事業年度分4億96百万円の金銭贈与を実施した。
(2) 既決定案件に係る資金援助
東長崎農協に対する資金援助の実施
平成12年3月28日の運営委員会で議決、主務大臣の認可を受けて決定した東長崎農協に対する長崎市農協の破綻処理に係る資金援助については、同年4月1日付けで東長崎農協との間で資金援助契約を締結し、同月3日に135億円の一括金銭贈与を実施するとともに、同月20日に5億円の劣後特約付金銭消費貸借による資金貸付けを実施した。
(3) 新規案件に係る資金援助
萩小畑漁協及び大井浦漁協の破綻処理に係る資金援助の決定
萩小畑漁協は、昭和58年を境に、基幹漁業である小型底引網漁業の水揚高が激減、その後の漁業不振と相俟って、固定化貸付金が累増し、経営困難に陥った。また、大井浦漁協は、元来組合員の漁業形態が零細であったことから、貸出金残高が少なく、金融自由化の進展や低金利等の影響により、信用事業収支が悪化、経営困難に陥った。
両漁協の破綻処理については、地元県、県内系統組織等により、貯金者の保護と信用秩序の維持を図るため、両漁協は信用事業を事実上整理したうえで、阿武萩地区の12漁協との合併により、新漁協を発足させることを内容とする処理スキームが取りまとめられた。
この合併及び新漁協の設立に係る適格性の認定については、これに係る14組合からの申請に基づき、山口県知事が主務大臣の事前承認を経て、平成13年2月21日付けで行った。債務超過額3,269百万円(萩小畑漁協1,567百万円、大井浦漁協1,702百万円)のうち要支援額3,229百万円(萩小畑漁協1,546百万円、大井浦漁協1,682百万円)については、全国段階に対して20億29百万円の支援が求められた。
そのうち、当機構に対しては17億35百万円の資金援助の申込みが当該2漁協を除く12漁協から同日付けで行われた。当機構は、同月22日の運営委員会で議決、主務大臣の認可を受けて、同年3月30日に資金援助を決定するとともに、同日付けで12漁協との間で資金援助契約を締結した。
この資金援助については、同年4月1日付けで新設合併した山口はぎ漁協に対し、同月2日付けで17億35百万円の一括金銭贈与を実施した。
3.調査業務の実施
(1) 農漁協系統信用事業モニタリング事業の実施
自己資本比率等のモニタリング選定基準に該当する組合について、その財務の状況等を継続的に調査し、経営分析を行い、もって保険事故の未然防止等に資するものであり、平成12事業年度は農協系統240組合、漁協系統46組合について事業を実施した。
(2) 農協等信用事業経営状況調査事業の実施
組合に信用事業に係るリスク管理の自己点検を行わせ、経営の健全性について自己確認を促すことにより、経営リスクの軽減を図るものであり、平成12事業年度は農協系統1,445組合、漁協系統837組合について事業を実施した。なお、当事業は、平成12事業年度をもって廃止することとした。
(3) 貯金保険制度の調査研究の実施
資金援助業務等の適正かつ円滑な実施の参考に供するため、平成12事業年度においては、米国の預金保険制度等に関する資料の収集、翻訳、検討を行った。
4.保険金支払業務等システム開発
万一、組合に保険事故が発生した場合、多数の貯金者に対して一定期間内に円滑かつ迅速な保険金の支払いが要求される。
このため、平成9事業年度から3カ年間で保険金の支払いに係る事務を電算化することを目的としてシステム開発に着手し、平成11事業年度で基幹となるシステムについて開発を終了したところである。
平成12事業年度においては、貯金保険法の改正により保険金支払の方法等が大幅改正されたことに伴い、当該システムにおける追加開発及びプログラム修正を実施した。
このことと併せて、ペイオフ解禁後の保険金支払等の円滑な実施のためには、事故組合の貯金等データを当機構のシステムが認識し得るデータ形式により取り込む必要があり、システム整備のため、農協系統では、各都道府県信農連ごとに運営されている信用事業システムを共同運営システムに移行し、全国一元化されるまでの間の対応として、平成10事業年度から4ヵ年計画により、各信農連の電算センター等(平成13事業年度までに共同運営システムに移行するものを除く。)にデータ変換プログラム開発委託を個別に実施しているところである。
なお、漁協系統においては、既に当該プログラム開発委託を実施し、その開発を終了している。
各事業年度における取組み状況は、別表のとおりとなっている。