平成12事業年度貯金保険機構年報
Ⅰ.一般情勢
わが国経済は、平成12年前半まではIT関連の設備投資需要が牽引する形で緩やかな回復を続けてきたが、年後半には米国経済の成長鈍化の影響を受けて、生産活動、設備投資の伸びが減速し、さらに、平成13年に入ると輸出の減少、国内株価の大幅下落等により、景況感は大幅に悪化している。日本銀行は、平成12年8月にゼロ金利政策を解除したが、平成13年3月にはデフレ脱却のために量的緩和策等を実施し、事実上ゼロ金利を復活させた。また、現在、金融機関の不良債権処理と行財政改革等の構造改革が国政の重要課題となっている。
こうした中で、ペイオフ解禁を前に新たなセーフティーネットの対応も視野に入れつつ、メガバンク誕生への始動など金融ビッグバンの取組みが急速に進んでいる。ペイオフ解禁については、金融システムの混乱を懸念し、1年延期 (平成14年4月解禁)となったが、既に預貯金者の取引金融機関の選別、預貯金分散の動きがみられる。このような動きに対処し、金融システム安定化の一環として、より迅速な破綻処理等を目的とした預金保険制度、貯金保険制度の見直しが行われ、平成12年5月に関係法の改正がなされたところである。
また、第22回JA全国大会で決議された農協系統の事業、組織に関する具体的取組みと軌を一にして、農林水産省経済局長の私的諮問機関である「農協系統の事業・組織に関する検討会」が設置され、所要の検討の結果、先の第151回国会において「農協改革2法」が成立した。これにより、今後は、系統として信頼性向上に資するため、同法に基づく基本方針(自主ルール)の確立による破綻未然防止システムの構築及び強制力のある法整備が図られたところである。
一方、農業・漁業を巡る情勢は、就業者数の減少、高齢化等が進行するとともに、輸入農水産物の増加、国内農水産物価格の低迷等によって、農業・漁業所得が低下してきているなど、依然厳しい状況にある。
こうした中で、平成11年7月に制定された「食料・農業・農村基本法」(新基本法)をさらに具体化するため、平成12年3月「基本計画」が決定されるとともに、地域の条件・特性を踏まえた生産努力目標の策定等が推進されている。今後、その着実な実行を図っていくことが重要となっている。
このような情勢の中で、系統信用事業についてみると、貯金については、農業所得等の減少による影響はあったものの、郵便貯金大量満期の資金等の還流により年度末残高は72兆円となり、年度間伸び率は2.6%となっている。他方、貸出金については、農業関係資金の残高が長期にわたり減少しており、さらに、住宅・生活関連資金の貸出しの伸びが鈍化したため、平成12年6月の対前年度の伸びをピークに下半期にかけてマイナスに転じ、年度末残高は、前年度比0.2%の減少となった。これは、総じて資金需要が低迷したことが原因であると思慮される。
こうした状況を踏まえ、系統金融機関においては、利用者の金融機関の選好意識の強まりや、他の金融業態との競争激化等、事業環境が今後ますます厳しい状況となることが予想されるところから、ペイオフ解禁を間近に控え、問題農漁協の迅速・集中的な処理を行うとともに、系統信用事業の信頼性向上に向け、リスク管理の強化、財務の健全化等に努めているところである。